明松1980

福岡県北九州市近郊の地名等について

境川/堺川の表記揺れ

福岡県北九州市戸畑区と同小倉北区の境に、境川という名前の川がある。

1.境川(さかいがわ)
江戸時代は、境川をはさんで、東側が豊前国、西側が筑前国というように、両国の国境になっていました。そこから、川にせっしている地域(上中原橋から両国橋の間)に「境川」という町名が付けられています。(この川は、現在、戸畑区小倉北区の境になっています。)
境川公園があるほうが小倉北区になります。

町名の由来 - 北九州市

かつては国境、今は区境を示す川として「境川」はあって、今も水勢よく流れているのだが、199号線沿い境川近くの郵便局に、看板「戸畑堺川郵便局」がかかっている。

ひと目、「堺川」は「境川」の間違いかと早合点するが、少し歩くとどうやら単純な話ではないことがわかる。

まず「境川」の河口から始めようとすると、「境川」には出会えない。

1. 堺川埠頭
埠頭の周囲に広がる工業地帯の原材料や製品を中心に取り扱う埠頭です。

公共埠頭【洞海地区】| コンテナターミナル・港湾施設 | 北九州港 / Port of KITAKYUSHU

堺川埠頭(堺川港)は、関門港洞海地区の東端に位置する堺川泊地の西岸にある工業港。原材料や製品の積み降ろしに利用する。埠頭の背後にある新日鐵八幡や新日鐵化学は敷地内に専用埠頭があり、公共埠頭を利用するのは地元の下請け企業だろう。「堺川」は誤記だが、そのまま定着して正式名称になった。

堺川埠頭(堺川港) - 産業と経済

ここで「堺川」を誤記とする記述に出会うが、一旦措いて次へ進むと、「堺川町公園」に行き着く。

川の名前は「境川」、町名は「境川○丁目」だが、「堺川」と名のついた公共施設が一定数存在するのは、どういう経緯によるものか。

そこで、時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」で閲覧できる国土地理院地形図を確認したところ、以下のとおりの結果となった。

測図 川の名前 町名 その他地名
1922(大正11)年 境川 境鼻
1936(昭和11)年 堺川 境鼻
1950(昭和25)年 堺川 境鼻
1969(昭和44)年 堺川 堺川町
1984(昭和59)年 境川 境川一丁目
1999(平成11)年 境川 境川一丁目

かつての「境川」は何かの理由で「堺川」となり、その間作られた埠頭や郵便局や公園の名前には「堺川」が冠されそのまま生き、何らかの理由でまた「境川」に戻った、という筋書きだ。昭和44年頃の「堺川町」は、現在の「堺川町公園」の位置とぴったり合う。